オランダの歌手、トラインチェ・オースターハウス(英名トレインチャ:以後英名で)のバカラック作品集第3弾!
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所有CDジャケットの表/裏
1. EVERY OTHER HOUR
2. YOU'LL NEVER GET TO HEAVEN (IF YOU BREAK MY HEART)
3. LET ME GO TO HIM
4. MAKING LOVE 〜 duet with GREGORY PORTER 〜
5. MAKE IT EASY ON YOURSELF
6. BE AWARE
7. ARTHUR'S THEME (BEST THAT YOU CAN DO)
8. EVERCHANGING TIMES
9. HEARTLIGHT
10. A THOUSAND THINGS THAT WERE YOU
11. I STILL HAVE THAT OTHER GIRL
12. MAYBE
13. (THERE'S) ALWAYS SOMETHING THERE TO REMIND ME
収録時間約55分
オランダの歌手、トレインチャのバカラック作品集第3弾です!
トレインチャはこれまでに『 THE LOOK OF LOVE BURT BACHARACH SONGBOOK 』(2006年)、『 WHO'LL SPEAK FOR LOVE BURT BACHARACH SONGBOOK Ⅱ 』(2007年) という二つのバカラック作品集をリリースしてきました。BURT BACHARACH SONGBOOK Ⅲ のサブタイトルが付いた本作も、前2作と同様にオランダのメトロポール・オーケストラ(ジャズ/ポップ系)をバックにしっとり&ゴージャスなサウンドを展開したバカラック作品集でございます。
CDジャケットの内側にはこんな2ショット写真もありました。いつ撮ったものなんでしょうか、バカラック爺の左手が👀…お元気そうで何より😃。
(ここでちょっとお断りを…)
本アルバムは、今年(2021年)7月上旬に “ 高品質なアナログ盤制作を行うオランダの Music On Vinyl からLP2枚組で今秋リリースされる ” との告知がなされ通販サイトで予約が始まりました。一週間後にはAppleなどで配信予約も開始。…でもそのうちCDも出るやろーと思った私はアナログ盤の予約はせず結局 BLUE NOTE からリリースされたCDをポチッと。がしかし、届いたCDを見て初めて気づいたんですがアナログ盤(LP)全15曲に対しCDは全13曲。LPとCDの曲目を比べてみると…
LPのD1.「 WIVES AND LOVERS(素晴らしき恋人たち)」とD3.「 WHO IS GONNA LOVE ME?(フー・イズ・ゴナ・ラヴ・ミー)」がCDには入ってないやんけっ!! やられたぁぁぁ。今更LPを購入する気も起きんし…。この2曲は配信版にも入ってなくて、結局私は聴けてません。
本アルバムは全15曲がバカラック・カヴァーなんですが、前2作と比べてマニアックな曲が多いんですよねぇ。そんなこんなで、1曲ずつ解説していきます。(トラックNo.はCD版のものです、あしからず)
T-1.「 EVERY OTHER HOUR 」: バート・バカラック&スティーブン・セイターがコラボしたミュージカル『 Some Lovers 』の1曲。フルオケらしいゴージャスなサウンドのイントロからスタート。ゆったり&しっとり歌うトレインチャの歌唱も素晴らしいです。なお、イタリア人女性シンガーKARIMAが歌っている「 COME IN OGNI ORA 」はこの曲のイタリア語歌詞によるカヴァーです(こちら参照)。
T-2.「 ユール・ネヴァー・ゲット・トゥ・ヘヴン 」: オリジナルはディオンヌ・ワーウィック(1964年7月にシングルA面でリリース、全米34位、アルバム『 MAKE WAY FOR DIONNE WARWICK 』収録)。でも、そのディオンヌ版ではなく1974年のスタイリスティックス版をベースにしたアレンジ。ゆったり&軽めのカヴァーです。
T-3.「 レット・ミー・ゴー・トゥ・ヒム(恋に生きて)」: これもオリジナルはディオンヌ・ワーウィック(1970年3月にシングルA面でリリース、全米32位、アルバム『 I'LL NEVER FALL IN LOVE AGAIN 』収録)。カヴァーは片手もない超レアな曲です。元々ミディアム・テンポの3拍子曲ですが、ディオンヌ版よりもゆったり歌っています。
T-4.「 メイキング・ラヴ 」: オリジナルはロバータ・フラック(1982年2月にシングルA面でリリース、全米13位、映画『 Making Love 』の主題歌)。カヴァーは両手もない渋い曲です。ロバータ・フラック版ではサビの部分で女性シンガー(多分自身の多重録音)とハモっているのですが、トレインチャは男性シンガーのグレゴリー・ポーターとデュエットしています。
T-5.「 涙でさようなら 」: オリジナルはジェリー・バトラー(1962年7月にシングルA面でリリース)。この曲のカヴァーは沢山ありますが、バイオリンのソロから始まるイントロからは何の曲か想像できません。全編を通じて繊細なアレンジを施したのは日本人ジャズ作編曲家の狭間美帆さん。トレインチャの歌も繊細です。繊細すぎてあまり印象に残らないのがちょいと残念。
T-6.「 ビー・アウェアー 」: オリジナルはディオンヌ・ワーウィック(1972年のアルバム『 DIONNE 』に収録)。元々静かで気品のある曲ですが、トレインチャ版はそれに輪をかけた感じ。フルート、オーボエ、クラリネットによる木管楽器のアンサンブルが特に美しく印象的ですし、トレインチャの歌唱も気持ちがこもっています。
T-7.「 ニューヨーク・シティ・セレナーデ 」: オリジナルはクリストファー・クロス(1981年8月にシングルA面でリリース、全米1位、映画『 ARTHUR(ミスター・アーサー)』の主題歌)。基本的にオリジナルをベースとしたオーケストレーションはちょっと弛緩していて凡庸。トレインチャの歌唱もイマイチのように思います。
T-8.「 エヴァーチェンジング・タイムズ 」: オリジナルはSiedah Garrett (サイーダ・ギャレット、1987年10月にシングルA面でリリース、1987年の映画 『 Baby Boom(赤ちゃんはトップレディがお好き)』 のテーマ曲)。1991年にアレサ・フランクリンがマイケル・マクドナルドをフィーチャリングしてカヴァー(こちら参照)。1995年には元スリー・ドッグ・ナイトのヴォーカル、Chuck Negron(チャック・ネグロン)がカヴァーしています※。オリジナルやアレサ版のソウル系バラードに対してトレインチャ版はポップ・バラード。T-7.同様あまりパッとしないかなぁ。
T-9.「 ハートライト 」: オリジナルはニール・ダイアモンド(1982年9月にシングルA面でリリース、全米5位、アルバム『 HEARTLIGHT 』収録)。全米5位になりながら片手くらいしかカヴァーのない渋い曲です。トレインチャのカヴァーはオリジナルよりもこの曲のもつ情緒性がより際立っていて、好カヴァーと思います。
T-10.「 A THOUSAND THINGS THAT WERE YOU 」: T-1と同様、バート・バカラック&スティーブン・セイターがコラボしたミュージカル『 Some Lovers 』の1曲。トレインチャ版が初めてのカヴァーなんですが、よくもまぁこんなマニアックで静かで地味な曲をカヴァーしたもんだ…というのが正直なところ。ピアノの刻みと流麗なストリングスのみをバックにトレインチャの抑制の効いた歌唱が心に響きます。
T-11.「 アイ・スティル・ハヴ・ザット・アザー・ガール 」: オリジナルはエルヴィス・コステロ with バート・バカラック(1998年のアルバム『 PAINTED FROM MEMORY 』に収録)。カヴァーはトレインチャで3例目という渋い曲。コステロに比肩しうるエモーショナルなトレインチャの歌唱は素晴らしいの一言。
T-12.「 メイビー 」: オリジナルはピーボ・ブライソン&ロバータ・フラック(1983年のアルバム『 BORN TO LOVE 』に収録)。カヴァーは片手もない超レア曲ですが隠れたスローバラードの名曲だと思います。オリジナルだとサビでハモってますがトレインチャ版ではハモらず、そこがちょっと物足りないかも。
T-13.「 愛の思い出(愛のウェイト・リフティング)」: オリジナルはルー・ジョンソン(1964年8月にシングルA面でリリース、全米49位)ですが、サンディ・ショウ版(全英1位)が有名なカヴァー定番曲。トレインチャ版もサンディ・ショウ版をベースにした軽快なアレンジ。でもまぁ可もなく不可もなくでしょうか。
LPにしか入ってない2曲は聴いてないんですがちょっとだけ。D1.「 素晴らしき恋人たち 」はカヴァー定番曲ですから説明は割愛します。D3.「 フー・イズ・ゴナ・ラヴ・ミー(誰が私を)」のオリジナルはディオンヌ・ワーウィック(1968年8月にシングルA面でリリース、全米33位、アルバム『 PROMISES, PROMISES 』収録)。カヴァーは片手もない超レア曲なんですよねー、これも。
私の個人的なレコメンドはT-1,6,9,11.あたりですが、チャレンジングな選曲に関しては心から拍手を送りたいですねー。
※2022年1月9日追記(kellysdadさんから頂いたコメントを反映)
【データ】
『 EVERCHANGING TIMES BURT BACHARACH SONGBOOK Ⅲ 』
TRIJNTJE OOSTERHUIS METROPOLE ORKEST
LP2枚組/CD:2021年11月26日リリース
レーベル:Music On Vinyl (所有CDは、BLUE NOTE / UNIVERSAL MUSIC)
番号:MOVLP2971 (所有CDは、382 577-2)
<以下クレジットのトラックNo.は所有CDに拠ります。LPにしか収録されていない2曲は含みません。>
Produced by VINCE MENDOZA
Executive Producer:TRIJNTJE OOSTERHUIS
Supervised by BURT BACHARACH and SUE MAIN
Arranged by VINCE MENDOZA (T-2,3,4,6,9,10), TOMMY LAURENCE (T-1), 狭間美帆 (T-5), CHRIS WALDEN (T-7,8), NAN SCHWARTZ (T-11,12), JEREMY LEVY (T-13)
Vocals:TRIJNTJE OOSTERHUIS
Vocals on T-4:TRIJNTJE OOSTERHUIS & GREGORY PORTER
Backing Vocals on T-2,3,8:BERGET LEWIS, TRIJNTJE OOSTERHUIS and CAROLINE DEST
Backing Vocals on T-7,13:TRIJNTJE OOSTERHUIS
Recorded at MCO STUDIOS, HILVERSUM
Vocals GREGORY PORTER Recorded at THE VILLAGE, LOS ANGELS, CALIFORNIA
METROPOLE ORKEST
1st Violin (9), 2nd Violin (8), Viola (7), Cello (5), Double Bass (5), Harp (1)
Flute (2), Oboe (1), Saxophone/Clarinet (5), French Horn (2), Trumpet (5), Trombone (3), Bass Trombone (1)
Percussion (2), Key/Piano (1), Bass (1), Guitar (1), Drums (1)
↓ 左からLP、CD、配信版
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